建築における容積率とは?13種類の用途地域と計算方法をわかりやすく解説

同じ広さの土地でも、建てられる建物の大きさは同じとは限りません。その違いを生む重要な基準の一つが「容積率」です。
容積率は建物の規模だけでなく、土地の使いやすさや資産価値、建築計画にも大きく関係します。
工場や倉庫、事務所、住宅などの建築を検討するときは、土地を購入する前に容積率を確認することが大切です。
この記事では、容積率の基本的な意味から、前面道路による制限、用途地域ごとの考え方、複数の用途地域にまたがる場合の計算方法、容積率に算入されない部分まで、わかりやすく解説します。
容積率とは?

容積率とは、敷地面積に対する建築物の延べ面積の割合です。建築基準法第52条により、敷地ごとに上限が定められています。
計算式は次のとおりです。
容積率(%)=延べ面積÷敷地面積×100
延べ面積とは、原則として建物の各階の床面積を合計した面積です。
例えば、敷地面積が100平方メートル、建物の延べ面積が150平方メートルの場合、容積率は次のようになります。
150平方メートル÷100平方メートル×100=150%
この場合の容積率は150%です。
1階が100平方メートル、2階が50平方メートルの建物でも、各階が50平方メートルの3階建てでも、延べ面積は同じ150平方メートルです。
そのため、容積率も同じ150%になります。
つまり、容積率だけでは建物の階数や形状までは決まりません。
実際の建築計画では、建ぺい率、高さ制限、斜線制限、日影規制、用途制限なども確認する必要があります。
なぜ容積率が必要なの?

容積率は、土地に対して建物の規模が大きくなりすぎることを防ぐために設けられています。
仮に容積率の制限がなければ、小さな土地にも非常に大きな建物を建てられることになり、人口や建物が過度に集中する可能性があります。
その結果、道路の混雑、上下水道への負担、日当たりや風通しの悪化、防災上の問題などが生じます。
容積率を定めることで、地域ごとの道路や公共施設の整備状況に応じて、建物の規模を調整しています。
なお、「容積」という言葉から高さを直接制限する制度のように感じますが、容積率が制限しているのは建物の延べ面積です。
建物の高さについては、絶対高さ制限や道路斜線制限、隣地斜線制限など、別の規定によって制限されます。
実際の上限は指定容積率だけでは決まらない

土地には、都市計画で「指定容積率」が定められています。しかし、建築できる延べ面積の上限が、指定容積率だけで決まるとは限りません。
前面道路の幅員が12メートル未満の場合は、原則として次の計算による容積率も確認します。
住居系用途地域
前面道路の幅員×0.4×100%
その他の用途地域
前面道路の幅員×0.6×100%
指定容積率と、前面道路の幅員から求めた容積率を比較し、原則として数値の小さいほうが適用されます。
例えば、指定容積率が200%の第一種住居地域で、前面道路の幅員が4メートルの場合は次のとおりです。
4メートル×0.4×100%=160%
指定容積率は200%ですが、前面道路による容積率は160%です。そのため、原則として実際に適用される上限は160%になります。
ただし、区域によっては特定行政庁が別の係数を指定している場合があります。
正確な数値は、土地の所在地を管轄する自治体で確認しましょう。
容積率と前面道路による制限は、建築基準法第52条に定められています。
13種類の用途地域と容積率の考え方

現在の用途地域は、住居系8種類、商業系2種類、工業系3種類の合計13種類です。
1.第一種低層住居専用地域
低層住宅の良好な住環境を守る地域です。
比較的低い容積率が指定されることが多く、高さ制限なども厳しく設定されています。
2.第二種低層住居専用地域
低層住宅を中心としながら、小規模な店舗なども建てられる地域です。
容積率のほか、建物用途や高さにも注意が必要です。
3.田園住居地域
農業と調和した低層住宅の環境を守る地域です。
農産物直売所や農家レストランなど、一定の施設を建てられる場合があります。
4.第一種中高層住居専用地域
中高層住宅を中心とする地域です。
低層住居専用地域より大きな建物を計画できる場合がありますが、住環境への配慮が求められます。
5.第二種中高層住居専用地域
中高層住宅のほか、一定規模の店舗や事務所なども建てられる地域です。
6.第一種住居地域
住環境を守りながら、店舗や事務所、ホテルなど一定の建物も認められる地域です。
7.第二種住居地域
第一種住居地域よりも幅広い用途の建物を建てられる地域です。
ただし、建築できる用途や規模には制限があります。
8.準住居地域
幹線道路沿いなどで、自動車関連施設と住宅が調和するように定められる地域です。
9.近隣商業地域
近隣住民が利用する店舗や事務所などの利便性を高める地域です。
住居系地域より高い容積率が指定される場合があります。
10.商業地域
店舗、事務所、ホテル、娯楽施設などが集まる地域です。
駅周辺や都市の中心部に多く、高い容積率が指定されることがあります。
11.準工業地域
環境への影響が大きい一部の工場を除き、比較的幅広い用途の建物を建てられる地域です。
工場や倉庫の計画候補地になることも多い地域です。
12.工業地域
主に工業の利便性を高めるための地域です。
工場や倉庫を建てやすい一方、学校や病院など建築できない用途があります。
13.工業専用地域
工業の利便性を特に重視する地域です。
工場や倉庫の建築に適していますが、住宅、学校、病院、ホテルなどは原則として建てられません。
用途地域ごとの指定容積率は、全国一律に一つの数値が決まっているわけではありません。
同じ用途地域でも自治体や場所によって指定値が異なるため、都市計画図や自治体の窓口で個別に確認する必要があります。
前面道路が2本以上ある場合

角地や二方向道路など、敷地が幅員の異なる複数の道路に接している場合は、原則として最も幅員の大きい道路を基準に、前面道路による容積率を計算します。
ただし、敷地や道路の形状、接道状況によって扱いが異なる場合があります。
水路を挟んで道路に接している土地も、橋の設置状況や接道幅などの条件によって判断されるため、行政機関への確認が必要です。
42条2項道路とセットバック

建築物の敷地は、原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければなりません。
しかし、古くからある市街地には、幅員が4メートル未満の道路もあります。
このような道のうち、特定行政庁が指定したものを「42条2項道路」または「みなし道路」といいます。
42条2項道路に接する敷地では、原則として道路の中心線から2メートルの位置まで敷地を後退させます。
これがセットバックです。
セットバックした部分は、建ぺい率や容積率を計算するときの敷地面積に含めることができません。
例えば、登記上の敷地面積が200平方メートルでも、セットバック部分が10平方メートルある場合、容積率を計算する敷地面積は原則として190平方メートルになります。
敷地面積が小さくなることで、建てられる延べ面積も減る可能性があるため、土地購入前の確認が重要です。
異なる容積率の地域にまたがる場合

一つの敷地が、容積率の異なる複数の地域にまたがることがあります。
この場合は、それぞれの区域の敷地面積に適用容積率を掛け、建てられる延べ面積を合計します。
例えば、300平方メートルの敷地のうち、
・200平方メートル部分の適用容積率が240%
・100平方メートル部分の適用容積率が360%
である場合、延べ面積の上限は次のようになります。
200平方メートル×240%=480平方メートル
100平方メートル×360%=360平方メートル
合計は840平方メートルです。
敷地全体に対する容積率は、840平方メートル÷300平方メートル×100=280%となります。
このような計算方法を「加重平均」といいます。
ただし、容積率の計算上は建物をどちらの区域に配置するかだけで決まるものではありません。
用途地域による用途制限、防火地域、高度地区、斜線制限などは、建物の配置によって影響を受ける場合があります。
容積率に算入されない主な床面積

建物の床面積であっても、一定の条件を満たすことで、容積率を計算する際の延べ面積から除外できる部分があります。
住宅の地下部分
住宅として使用する地階部分は、一定の構造要件を満たす場合、住宅部分の床面積合計の3分の1を限度として、容積率算定上の延べ面積から除外できます。
例えば、住宅部分の床面積が合計150平方メートルで、そのうち地階が30平方メートルの場合、除外限度は50平方メートルです。そのため、地階30平方メートル全体を除外できる可能性があります。
ただし、地階であれば自動的に除外されるわけではありません。
地盤面との位置関係など、法令上の要件を満たす必要があります。
車庫・駐車場部分
自動車車庫や駐車場などの床面積は、建物全体の各階床面積の合計の5分の1を限度として、容積率算定上の延べ面積から除外できる場合があります。
例えば、建物全体の床面積が150平方メートル、そのうち車庫が30平方メートルであれば、除外限度は30平方メートルです。
そのため、車庫部分の全てを除外できる可能性があります。
ただし、この扱いは容積率を計算するための特例です。
他の法令や確認申請上の延べ面積まで、すべて同じように除外されるわけではありません。
このほか、共同住宅の共用廊下や階段、エレベーターの昇降路、一定の備蓄倉庫や宅配ボックスなどについても、条件により不算入となる場合があります。
床面積そのものの算定についても、壁や柱などの区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を基本とし、屋外部分とみなされる部分などは床面積に算入しない場合があります。
容積率を確認するときの注意点

容積率を確認するときは、指定容積率だけを見るのではなく、次の項目を総合的に確認することが大切です。
・用途地域と指定容積率
・前面道路の幅員と容積率係数
・セットバックの有無
・敷地が複数の区域にまたがっていないか
・容積率に算入されない部分の条件
・建ぺい率や高さ制限
・道路斜線、隣地斜線、北側斜線
・日影規制や高度地区
・防火地域、準防火地域
・建築できる建物用途
容積率に余裕があっても、建ぺい率や高さ制限などにより、計算上の上限まで建てられないことがあります。
また、工場や倉庫を計画する場合は、建物本体だけでなく、事務所、機械室、倉庫、車庫などを含めた延べ面積を確認しなければなりません。
将来の増築を予定している場合は、増築後の容積率まで考慮して計画することが重要です。
まとめ

容積率とは、敷地面積に対して建てられる建物の延べ面積の割合です。
基本的には、指定容積率と前面道路の幅員から求める容積率を比較し、厳しいほうの数値が適用されます。さらに、セットバックや複数の用途地域、地下室、車庫などの扱いによって、実際に建築できる延べ面積は変わります。
土地の広告に記載された容積率だけを見て、「この大きさの建物が建てられる」と判断するのは注意が必要です。
特に工場や倉庫、事務所などの建築では、必要な床面積を確保できるかどうかが、事業計画や土地選びに大きく影響します。
土地の購入や建築計画を進める際は、用途地域、前面道路、セットバック、建ぺい率、高さ制限などを含め、早い段階で建築士や建設会社、行政機関に確認しましょう。
※本記事は容積率の一般的な考え方を解説したものです。実際の適用条件や計算方法は、敷地の所在地、都市計画、道路状況、自治体の条例、特定行政庁の指定などによって異なります。

