鉄骨造の基礎工事を知ろう|工事の流れと重要なポイントをわかりやすく解説

建物を見ると、どうしても柱や外壁、屋根など地上に見えている部分に目が向きます。
しかし、その建物を安全に支えているのが、地面の下につくられている「基礎」や「杭」です。
基礎には、建物そのものの重さや、建物にかかるさまざまな力を地盤へ伝え、建物を安定して支える大切な役割があります。
特に鉄骨造の建物は、一般的な木造住宅と比べて建物の規模が大きく、重量も重くなる傾向があります。
そのため、建物の大きさや構造だけでなく、その土地の地盤の状態に合わせて、適切な基礎を計画することが重要です。
基礎や地盤への対策が適切でなければ、建物が完成してから一部だけが沈み込む「不同沈下」などが発生し、建物に大きな影響を与える可能性があります。
完成してしまうとほとんど見えなくなる基礎ですが、建物を長く安全に使っていくためには非常に重要な部分なのです。
今回は、鉄骨造の建物がどのような工程で基礎をつくっていくのか、基礎工事の大まかな流れを順番にご紹介します。
鉄骨造における基礎工事の役割

基礎は、単に建物の下にコンクリートをつくればよいというものではありません。
建物の荷重を受け止め、それを地盤へ適切に伝えることが求められます。
また、建物には建物自体の重さだけではなく、人や設備、荷物などの重さに加えて、地震や風などによる力も加わります。
特に工場や倉庫では、大きな鉄骨の柱や梁、重量のある設備を設置することもあります。
そのため、建物の規模や用途、地盤の状況などを踏まえながら、基礎や杭を計画していく必要があります。
では、実際の基礎工事はどのように進んでいくのでしょうか。
基礎工事の主な流れ

1.根伐り
最初に行うのが「根伐り(ねぎり)」です。
根伐りとは、基礎をつくるために地面を掘削する作業のことです。
ショベルカーなどの重機を使って掘削を進め、必要に応じて細かな部分を人の手で調整しながら、設計で決められた深さや形状に整えていきます。
鉄骨造の建物では、地中梁や基礎の大きさなどに合わせて、木造住宅よりも深く掘削するケースがあります。
掘削深さは、「地中梁などの高さ+捨てコンクリートの厚さ+砕石の厚さ+施工上必要となる余裕」などを考慮して決められます。
掘削した底の部分である「根伐り底」には砕石などを敷き、所定の高さになるよう平らに整えます。
さらに、ランマーなどの機械を使用して十分に締め固めます。
ただ砕石を敷くだけではなく、しっかり締め固めて安定した地盤をつくることが重要です。
2.山留め
地面を深く掘ると、周囲の土が崩れてくる危険があります。
そこで必要に応じて行うのが「山留め」です。
山留めとは、掘削した周囲の地盤が崩れてこないように壁や板などを設置し、土砂を支える工事です。
周辺地盤への影響を抑えることはもちろん、工事を行う作業員の安全を守るためにも重要な工程です。
掘削する深さや敷地条件、周辺環境などによって適切な山留め方法が選ばれます。
3.杭工事
すべての建物で杭工事を行うわけではありません。
地盤調査を行い、地盤だけでは建物を十分に支えることが難しいと判断された場合などに、杭を使って建物の荷重を強固な地盤まで伝えます。
杭には、コンクリート杭や鋼管杭などさまざまな種類があり、施工方法にも複数の工法があります。
どの種類の杭を採用するのかは、
建物の規模
建物の重量
地盤の強さ
支持層までの深さ
周辺環境
施工条件
などを総合的に検討して決めます。
鉄骨造の建物では鋼管杭が採用されることも多く、建物や地盤条件に合わせた適切な杭工法を選択することが重要です。
4.捨てコンクリート
根伐りや砕石の施工などが終わると、「捨てコンクリート」、通称「捨コン」を施工します。
名前だけを見ると不要なコンクリートのように感じるかもしれませんが、基礎工事を正確に進めるために重要な役割があります。
捨てコンクリートの主な目的は、基礎を施工する場所を平らに整えることです。
表面が平坦になることで、その上に建物の位置を示す線を書いたり、鉄筋や型枠を正確に設置したりしやすくなります。
捨てコンクリート自体は、建物を構造的に支える主要な基礎部分ではありません。
一般的には50mm程度の厚さで施工されることがありますが、建物や施工計画によって異なります。
5.墨出し
捨てコンクリートが施工されると、その表面に柱や基礎、鉄筋、型枠などの位置を示す線を書いていきます。
これを「墨出し」といいます。
墨出しは、いわば実際の建設現場に描く「原寸大の設計図」です。
設計図に記載された寸法を現場へ正確に写し出し、その線を基準として鉄筋や型枠などを施工していきます。
ここで位置がずれてしまうと、その後の工事にも影響するため、非常に正確さが求められる作業です。
6.鉄筋組立
墨出しが終わると、基礎の鉄筋を組み立てていきます。
鉄筋コンクリートは、コンクリートと鉄筋を組み合わせることで、それぞれの特徴を活かして建物を支えています。
施工では、「配筋図」と呼ばれる図面を確認しながら、鉄筋の太さ、本数、間隔、位置などを正確に組み上げていきます。
組み立てた鉄筋がコンクリート打設時に動かないよう、鉄筋同士を結束線などで固定します。
鉄筋組立が完了した後は「配筋検査」を行います。
設計図どおりに鉄筋が配置されているか、鉄筋の径や間隔、定着などに問題がないかを確認します。
コンクリートを打設すると鉄筋は見えなくなってしまうため、その前にしっかり確認することが重要です。
7.型枠組立
鉄筋の組立と並行して、基礎の形をつくるための「型枠」を組み立てます。
型枠とは、コンクリートを流し込んだときに、設計どおりの形になるよう囲う仮設の枠です。
木製の合板や金属製の部材などを使い、墨出しした位置に合わせて正確に設置していきます。
コンクリートの圧力に耐えられるよう、しっかり固定することも重要です。
8.コンクリート打設
鉄筋と型枠の準備が整うと、いよいよ基礎コンクリートを打設します。
一般的には、ミキサー車で運ばれてきた生コンクリートをポンプ車などを使って型枠内へ流し込みます。
コンクリートを打設する際には、スランプ試験などをはじめとした品質確認を行い、使用する生コンクリートが計画した品質を満たしているか確認します。
型枠に流し込んだだけでは、内部に空気が残ってしまうことがあります。
そこで、バイブレーターと呼ばれる機械を使用して振動を与え、コンクリートを隅々まで行き渡らせながら締め固めていきます。
コンクリートの品質を確保するうえで、重要な作業です。
9.養生・脱枠
コンクリートを打設した後は、すぐに型枠を外すわけではありません。
コンクリートが必要な強度を発現するまで、適切な期間「養生」します。
気温や使用するコンクリート、部位などによって必要な養生期間は異なります。
適切な時期になったら型枠を取り外し、基礎の形状や仕上がりに問題がないか確認します。
この型枠を外す作業が「脱枠」です。
脱枠後には、基礎の寸法や出来形、コンクリート表面の状態などを確認します。
10.埋め戻し
基礎コンクリートが完成した後、根伐りによって掘削した基礎周辺の空間へ土を戻していきます。
これを「埋め戻し」といいます。
ただ土を戻すだけではありません。
埋め戻した土が後から沈下すると、床や土間コンクリートの下に空洞ができたり、不具合につながったりする可能性があります。
そのため、一度に大量の土を入れるのではなく、必要に応じて何層かに分けながら十分に締め固めます。
その後、砕石や防湿シート、鉄筋などを施工し、土間コンクリート工事へと進んでいきます。
基礎完成

ここまでの工程を経て、建物を支える基礎が完成します。
完成後は地面や床の下に隠れてしまうため、建物を利用する人が基礎を見る機会はほとんどありません。
しかし、基礎工事は建物を長く安全に使用するために欠かすことのできない工事です。
根伐り、杭、砕石、捨てコンクリート、墨出し、鉄筋、型枠、コンクリート。
一つひとつの工程を正確かつ丁寧に施工し、さらに各段階で確認を積み重ねることで、丈夫な基礎がつくられていきます。
まとめ|鉄骨造では見えない基礎工事が重要

鉄骨造の建物というと、大きな柱や梁などの鉄骨部分が注目されます。
しかし、その鉄骨を安全に支えているのは地面の下にある基礎です。
どれほど立派な鉄骨を組み上げても、それを支える地盤や基礎が適切でなければ、安心して長く使える建物にはなりません。
そのため鉄骨造の建設では、建物の規模や用途だけを見るのではなく、まず地盤調査を行い、その土地に合った杭や基礎を計画することが大切です。
さらに施工中には、配筋検査やコンクリートの品質確認などを行い、設計どおりに施工されていることを一つずつ確認していきます。
基礎は完成後に見えなくなる部分だからこそ、施工会社の経験や施工管理、品質管理が重要になります。
工場や倉庫などの鉄骨造をご検討されている方は、建物のデザインや価格だけでなく、「地盤や基礎についてどのように考えているのか」「どのような検査・品質管理を行っているのか」といった部分も、建設会社へ確認してみるとよいでしょう。
建物を長く安心して使うためには、目に見える部分だけではなく、その建物を足元から支えている「基礎」について知ることも大切です。

