建築制限とは?土地選び・建物計画で確認すべき重要ポイントをわかりやすく解説

建物を新築・増築・用途変更するときは、土地を所有しているからといって、自由に建築できるとは限りません。
土地や建物には、都市計画法や建築基準法をはじめ、農地法、盛土規制法、道路法、河川法、文化財保護法、各自治体の条例などによって、さまざまな建築制限が設けられています。
特に工場や倉庫、店舗、事務所、医療施設などを計画する場合は、住宅よりも確認項目が多くなりがちです。
「土地を購入した後に、希望する建物が建てられないことが分かった」という事態を避けるためにも、計画の初期段階で建築制限を確認することが重要です。
今回は、建築制限の基本から、用途地域、建ぺい率・容積率、斜線制限、道路との関係、都市計画法第37条による建築制限まで、わかりやすく解説します。
建築制限とは

建築制限とは、建築物の敷地、構造、設備、用途、大きさ、高さなどについて、法令や条例によって設けられている制限のことです。
建築基準法は、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低基準を定め、生命、健康、財産を守ることを目的としています。
建築制限の中心となる法律は、主に次の2つです。
都市計画法では、土地をどのように利用し、どのようなまちをつくるかという大きな方向性を定めます。
建築基準法では、実際に建築できる建物の用途、規模、高さ、道路との関係、安全性などを定めます。
さらに、土地の場所や状態によっては、農地法、道路法、河川法、土地区画整理法、文化財保護法、砂防法、盛土規制法、消防法、自治体独自の条例なども関係します。
そのため、建築計画では、一つの法律だけでなく、複数の法令を総合的に確認しなければなりません。
用途地域による建物用途の制限

用途地域とは、住居、商業、工業など、市街地の土地利用の方向性を定める制度です。
現在の用途地域は、次の13種類に分けられています。
・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域
・田園住居地域
・近隣商業地域
・商業地域
・準工業地域
・工業地域
・工業専用地域
以前は12種類でしたが、田園住居地域が加わり、現在は13種類となっています。
用途地域ごとに、建築できる建物の種類や規模が異なります。
例えば、住居系の用途地域では、良好な住環境を守るため、規模の大きな店舗や工場、遊戯施設などが制限されます。
一方、準工業地域、工業地域、工業専用地域では、工場や倉庫を建てやすくなります。
ただし、準工業地域では危険性や環境への影響が大きい工場が制限されるなど、すべての工場が無条件で建築できるわけではありません。
土地を探す際は、単に「工業系の地域だから大丈夫」と判断せず、具体的な業種、作業内容、使用する機械、原材料、危険物、作業場面積などを確認する必要があります。
兼用住宅とは

兼用住宅とは、住宅部分と店舗、事務所、作業場などの非住宅部分が、一つの建物として一体的に利用される建築物です。
住居系用途地域で認められる代表的な兼用住宅は、一般的に次の条件を満たすものです。
・非住宅部分の床面積が50平方メートル以下
・非住宅部分が建築物全体の延べ面積の2分の1未満
・事務所、日用品店、食堂、喫茶店、理髪店、学習塾など、法令で定められた用途であること
国土交通省の用途制限資料でも、兼用住宅は、非住宅部分が50平方メートル以下かつ延べ面積の2分の1未満のものとして整理されています。
なお、建物がつながっていても、利用形態や内部の行き来の方法、構造によって判断が異なる場合があります。
名称だけで判断せず、設計者や行政窓口への確認が必要です。
店舗の用途による制限

店舗は、大きく分けると次のような種類があります。
・商品を販売する物販店舗
・飲食物を提供する飲食店
・理美容店やクリーニング店などのサービス店舗
ただし、建築基準法上の用途判断は、単純に「店舗」という名称だけでは決まりません。
販売する商品、サービス内容、営業時間、客席の有無、調理設備、床面積、周辺環境への影響などによって扱いが異なります。
また、同じ業種でも床面積によって建築できる用途地域が変わる場合があります。
店舗を計画するときは、用途地域だけでなく、駐車場、接道、騒音、臭気、消防設備なども確認しましょう。
工場の用途による制限

工場の建築可否は、用途地域に加えて、作業内容や規模によって判断されます。
確認される主な項目は次のとおりです。
・作業場の床面積
・使用する機械の種類と出力
・騒音や振動の発生
・臭気、煙、粉じんの発生
・危険物の使用や保管
・周辺環境への影響
・製造、加工、修理などの事業内容
工業地域では、原則として幅広い工場を建築できます。
工業専用地域では工場立地を中心とした土地利用が想定され、住宅、学校、病院、ホテルなどは建築できません。
準工業地域では、危険性や環境を悪化させるおそれが大きい工場が制限されます。
工場建設では、用途地域だけで判断せず、事業内容を具体的に整理して、行政との事前協議を行うことが大切です。
市街化区域と市街化調整区域

都市計画区域では、計画的に市街地を形成するため、市街化区域と市街化調整区域に区分されることがあります。
これを「区域区分」または「線引き」といいます。
市街化区域は、すでに市街地となっている区域や、おおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を進める区域です。
市街化調整区域は、市街化を抑制する区域です。
市街化調整区域では、住宅、店舗、工場、倉庫などの建築が一律に禁止されているわけではありませんが、原則として開発や建築が制限されます。
既存宅地、農林漁業用施設、公益上必要な施設、既存工場の増築、条例で定められた建築物など、一定の条件を満たした場合に認められることがあります。
市街化調整区域で建築を検討する場合は、土地を購入する前に、自治体の開発許可担当窓口へ相談する必要があります。
建ぺい率と容積率の制限

用途が建築可能であっても、敷地いっぱいに建物を建てられるとは限りません。
建築物の大きさを制限する代表的な基準が、建ぺい率と容積率です。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。
建ぺい率は、次の計算式で求めます。
建ぺい率=建築面積÷敷地面積×100
例えば、敷地面積1,000平方メートル、建ぺい率60%の場合、原則として建築面積の上限は600平方メートルです。
容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ面積の割合です。
容積率=延べ面積÷敷地面積×100
敷地面積1,000平方メートル、容積率200%の場合、原則として延べ面積の上限は2,000平方メートルです。
ただし、容積率は前面道路の幅員によって、都市計画で指定された数値よりも小さくなる場合があります。
また、防火地域内の耐火建築物や一定の角地などでは、建ぺい率が緩和されることがあります。
高さと斜線の制限

建築物の高さには、周辺の日照、通風、採光、圧迫感などを考慮した制限があります。
代表的なものは次のとおりです。
・道路斜線制限
・隣地斜線制限
・北側斜線制限
・絶対高さ制限
・日影規制
・高度地区による制限
道路斜線制限は、前面道路の反対側から一定の勾配で引いた斜線の内側に、建物を納めるための制限です。
隣地斜線制限は、隣地境界付近の採光や通風を確保するための制限です。
北側斜線制限は、主に住居系用途地域で、北側の敷地への日照を確保するために設けられています。
どの制限が適用されるかは、用途地域、高度地区、建物の用途や高さなどによって異なります。
なお、民法上、建物は原則として隣地境界線から50センチメートル以上離す規定がありますが、地域の慣習や建築基準法上の防火規定などによって扱いが変わる場合があります。
道路との関係による制限

都市計画区域や準都市計画区域内では、建築物の敷地は、原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければなりません。
これを「接道義務」といいます。
一般的な道路の幅員は4メートル以上ですが、地域によっては6メートルが基準となる場合があります。
幅員4メートル未満の道でも、建築基準法第42条第2項の道路として指定されている場合は、道路の中心線から原則2メートル後退することで建築できる場合があります。
この後退を「セットバック」といい、後退部分には、原則として建物や塀などを設置できません。
道路のように見えても、建築基準法上の道路として認められていない場合があります。
土地購入前には、自治体が管理する指定道路図や道路台帳などで、道路種別を確認することが重要です。
袋小路の私道と位置指定道路

分譲地などでは、行き止まりになった袋小路状の私道が設けられていることがあります。
私道に面している土地でも、その私道が建築基準法上の道路として認められていれば、建築できる可能性があります。
代表的なものが、建築基準法第42条第1項第5号の「位置指定道路」です。
袋小路状の道路については、道路の延長、幅員、転回広場の有無などの基準があります。
国の基準では、一定の短い道路や、終端などに転回広場が設けられている道路、幅員6メートル以上の道路などは、袋小路状でも位置指定道路として認められる場合があります。
ただし、位置指定の有無だけでなく、私道の所有権、通行権、掘削承諾、上下水道管の埋設、維持管理費の負担なども確認しなければなりません。
災害や復興に伴う建築制限

災害から人命を守り、安全なまちづくりを進めるための建築制限もあります。
建築基準法第39条では、津波、高潮、出水などによる危険が著しい区域を、自治体が条例で「災害危険区域」に指定できます。
災害危険区域では、住宅の建築禁止、建物の構造、基礎の高さなどが制限される場合があります。
また、建築基準法第84条では、市街地で災害が発生した場合、復興計画を進めるため、一定期間、区域を指定して建築を制限・禁止できる制度が設けられています。
その他に確認すべき建築制限

建築計画では、用途地域や建築基準法以外にも、次のような規制を確認する必要があります。
・地区計画
・特別用途地区
・防火地域、準防火地域
・高度地区
・景観計画、景観条例
・風致地区
・農地法
・盛土規制法
・土地区画整理法
・道路法、河川法
・文化財保護法
・砂防法、急傾斜地法
・工場立地法
・騒音規制法、振動規制法
・自治体独自の条例、指導要綱
工場や倉庫の場合は、危険物、排水、騒音、振動、臭気、大気、緑地、搬出入車両などについて、建築確認とは別の届出や許可が必要になることがあります。
都市計画法第37条による建築制限

開発許可を受けた開発区域では、原則として、開発工事の完了公告が行われるまで、建築物を建築したり、特定工作物を建設したりすることはできません。
これが、都市計画法第37条による建築制限です。
ただし、開発工事用の仮設建築物を建築する場合や、都道府県知事、市長などの許可権者が、開発工事に支障がないと認めた場合には、完了公告前でも建築が認められることがあります。
一般的には、次のような事情が審査の対象になります。
・造成工事と建築工事を一体的に行う必要がある
・建物の基礎と擁壁を同時に施工する必要がある
・建物の壁が土留めを兼ねている
・雨水貯留施設などが建物と一体構造になっている
・学校、社会福祉施設、医療施設など公益上必要な建物である
・開発工事と建築工事を同時に行っても、防災上の支障がない
ただし、第37条の承認基準や必要書類は、自治体によって異なります。
許可を受けずに工事を進めることはできないため、開発工事と建築工事を並行して進めたい場合は、開発許可担当部署との事前協議が必要です。
建築制限を確認する際の重要ポイント

建築制限は、用途地域だけを確認すれば終わりではありません。
土地を購入する前や設計を始める前に、少なくとも次の内容を確認しましょう。
1.都市計画区域の内外
2.市街化区域か市街化調整区域か
3.用途地域と建築物の用途
4.建ぺい率と容積率
5.道路の種類、幅員、接道長さ
6.斜線制限、高度地区、日影規制
7.防火地域、準防火地域
8.地区計画や自治体条例
9.農地、造成、河川、文化財などの規制
10.開発許可や都市計画法第37条の手続き
同じ用途地域であっても、地区計画や条例によって、用途、壁面位置、高さ、敷地面積などが追加で制限されている場合があります。
まとめ

建築制限には、建物の用途、大きさ、高さ、配置、道路との接し方、安全性など、さまざまな内容があります。
特に工場、倉庫、店舗、医療施設などの建設では、用途地域だけでなく、作業内容、周辺環境、道路条件、開発許可、各種条例まで総合的に確認しなければなりません。
土地を購入してから建築できないことが判明すると、計画の変更や追加費用、スケジュールの遅延につながります。
建築計画を円滑に進めるためには、候補地を選ぶ段階から、建設会社や設計者、行政機関へ相談することが大切です。
※建築できる用途や規模、都市計画法第37条の承認基準は、土地の所在地や自治体の条例、個別の計画内容によって異なります。
実際の建築計画では、所在地を管轄する自治体や専門家へ事前にご確認ください。

