増築でも注意!知っておくべき建築基準法とは?

「建物を少し広くしたい」「工場に倉庫を増築したい」「事務所部分を増やしたい」と考えたとき、最初に確認しておきたいのが建築基準法です。
増築は、新築に比べれば簡単にできそうなイメージがありますが、実際には用途地域や道路、建ぺい率・容積率、建物の高さなど、さまざまな規制が関係します。
さらに重要なのが、既存建物と増築部分を合わせた建物全体で、法令への適合性を確認する必要があるケースがあることです。
「敷地にまだ空きがあるから建てられるだろう」と考えて計画を進めてしまうと、後から増築できないことが分かる場合もあります。
今回は、増築を計画するときに知っておきたい建築基準法について、
新築・増築の違い
用途地域
道路・接道
面積の算定
建ぺい率・容積率
建築物の高さ
高さに関する制限
という項目に分けて、わかりやすく解説します。
新築・増築とは?

まず、知っておきたいのが、「新築」と「増築」の違いです。
一般的に新築とは、建築物がない敷地に新たに建築物を建てることをいいます。
一方、増築とは既存の建物がある敷地で、建物の床面積を増やすことをいいます。
例えば、
- 工場の横に製品倉庫を追加する
- 事務所部分を広げる
- 建物内部の吹抜けに新しく床を設ける
といった工事も増築に該当する可能性があります。
また、同じ敷地内に既存建物と用途上密接な関係のある別棟を建築する場合についても、建築基準法上の増築として扱われることがあります。
そのため、「建物の外側を広げる工事だけが増築」というわけではありません。
増築を考える際には、最初の段階で設計者や建設会社に相談し、どのような手続きが必要になるのか確認しておくことが大切です。
なお、2025年4月の建築基準法改正では建築確認・検査の対象範囲が見直されました。
建築物の規模や構造、建築する区域などによって確認申請の要否が異なるため、「小さな増築だから確認申請は不要」と自己判断しないようにしましょう。
用途地域を確認する

建物を新築・増築するとき、最初に確認しておきたい項目の一つが用途地域です。
用途地域とは、
- この地域には住宅を中心に建てる
- この地域では商業施設を建てられる
- この地域では工場を建てられる
といった土地利用のルールを定めたものです。
現在、用途地域は13種類あります。
住居系8地域
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
田園住居地域
商業系2地域
近隣商業地域
商業地域
工業系3地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域
用途地域によって、建築できる建物の種類や規模が異なります。
特に工場や倉庫の場合は注意が必要です。
同じ「工場」であっても、作業内容や使用する機械、原材料、危険物の取扱いなどによって建築できる地域が変わる場合があります。
また、敷地が複数の用途地域にまたがっている場合には、規制によって適用方法が異なります。
そのため、単純に「敷地の半分以上がこの用途地域だから、すべて同じ規制」と判断するのではなく、それぞれの規定を確認する必要があります。
道路と接道条件にも注意

増築計画では、建物だけでなく敷地がどの道路に接しているかも重要です。
建築基準法では、原則として建築物の敷地は建築基準法上の道路に一定以上接している必要があります。
一般的には、敷地が道路に2m以上接していることが基本となります。
また、建築基準法上の道路は、原則として幅員4m以上が基本です。
ただし、昔から建物が立ち並んでいる地域などでは、幅員4m未満でも建築基準法上の道路として扱われている場合があります。
このような道路では、将来的に道路幅員を確保するため、道路中心線から原則2m後退した位置を道路境界線とみなす、いわゆるセットバックが必要になることがあります。
セットバックした部分には原則として建物や塀などを設けることができず、敷地面積の算定にも影響します。
増築する土地に十分なスペースがあるように見えても、道路条件を調査した結果、
「想定していた場所まで建物を広げられない」
というケースもあります。
増築計画では、敷地境界だけを見るのではなく、建築基準法上の道路種別・道路幅員・接道長さ・セットバックの有無まで確認しておきましょう。
面積の算定基準を知っておこう

建築基準法では、さまざまな「面積」が登場します。
特に重要なのが、敷地面積・建築面積・床面積・延べ面積です。
敷地面積
敷地面積とは、基本的に敷地を真上から見たときの水平投影面積です。
ただし、セットバックが必要な場合、その部分は建築基準法上の敷地面積に算入できないため注意が必要です。
建築面積
建築面積とは、建築物を真上から見たときに、建物が敷地を覆っている部分の面積です。
一般的には外壁や柱の中心線を基準として算定します。
建築面積は、後ほど説明する建ぺい率の計算に使用します。
床面積
床面積とは、各階の壁や柱などで囲まれた部分の水平投影面積です。
ピロティやポーチ、吹きさらしの廊下、屋外階段などについては、形状や使用方法、開放性などによって床面積に算入するかどうかが判断されます。
延べ面積
延べ面積とは、各階の床面積を合計した面積です。
1階が1,000㎡、2階が500㎡なら、基本的な延べ面積は1,500㎡となります。
増築すると延べ面積が増えるため、容積率や防火・避難など、さまざまな規定に影響する可能性があります。
容積率と建ぺい率

増築を考えるうえで非常に重要なのが、容積率と建ぺい率です。
容積率とは?
容積率とは、敷地面積に対する延べ面積の割合です。
例えば、敷地面積1,000㎡延べ面積1,500㎡の場合、1,500㎡ ÷ 1,000㎡ × 100 = 150%となります。
用途地域などによって容積率の上限が設定されているため、既存建物がすでに上限近くまで建てられている場合、敷地に空地があっても増築できない可能性があります。
また、前面道路の幅員によって、指定容積率よりも低い容積率が上限となる場合もあります。
建ぺい率とは?
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です。
例えば、敷地面積1,000㎡建築面積600㎡なら、600㎡ ÷ 1,000㎡ × 100 = 60%となります。
建ぺい率には、敷地内に一定の空地を確保し、採光・通風・防災などの環境を確保する目的があります。
増築では、現在の建物が建ぺい率の上限にどの程度近づいているかを確認することが重要です。
建築物の高さはどこから測る?

建築基準法では、建物の高さについても算定方法が決められています。
基本となるのが地盤面です。
地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均的な高さを基準として設定する水平面です。
建築物の高さは、原則としてこの地盤面を基準として算定します。
ただし、道路斜線や北側斜線などでは、それぞれ別の考え方によって高さを検討するため注意が必要です。
また、階段室や昇降機塔など屋上から突出する部分については、その用途、面積、高さなど一定の条件を満たした場合、高さの算定に含まれないケースがあります。
増築時に注意したい高さの制限

敷地に余裕があり、建ぺい率・容積率にも問題がなくても、建物の高さによって増築が制限される場合があります。
代表的なのが、絶対高さ制限・道路斜線・隣地斜線・北側斜線などです。
建築物の高さの限度

第一種・第二種低層住居専用地域や田園住居地域などでは、都市計画によって建築物の高さが10mまたは12mに制限される場合があります。
周辺の良好な住環境を守るための規制です。
道路斜線制限

道路斜線制限とは、道路側の採光や通風などを確保するため、前面道路の反対側の境界線などを基準として建築物の高さを制限するものです。
用途地域や容積率などによって、適用される範囲や勾配が異なります。
建物を道路境界線から後退させることで、一定の緩和を受けられる場合もあります。
隣地斜線制限

隣地斜線制限とは、隣接する敷地の日照・採光・通風などを確保するために設けられている高さ制限です。
隣地境界線からの距離などに応じて、建築できる高さが決まります。
北側斜線制限

北側斜線制限は、主に住居系地域で北側隣地の日照や採光を確保するための規制です。
第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域などが対象となり、地域や日影規制の指定状況によって適用が異なります。
増築は「空いている場所に建てればいい」わけではない

増築を計画するときに特に注意したいのが、「敷地に空地がある=増築できる」ではない例えば工場で、「駐車場の横に500㎡くらい倉庫を増築したい」と考えた場合でも、
- 用途地域
- 接道条件
- 建ぺい率
- 容積率
- 高さ制限
- 防火・準防火地域
- 既存建物の法適合状況
- 構造上の安全性
- 避難経路
- 消防関係法令
など、さまざまな条件を確認する必要があります。
さらに、2025年4月からは原則としてすべての建築物の新築・増改築時に省エネ基準への適合が求められる制度がスタートしています。
小規模なものなど一部例外がありますが、現在は建築基準法だけでなく省エネ関係の規定も含めて計画することが重要です。
そのため、増築を予定している場合は、具体的な設計を始める前に「この敷地に、あとどのくらいの建物を建てられるのか」を調査することをおすすめします。
まとめ|増築こそ事前の法規チェックが大切

建築基準法には数多くの規定があり、用途地域・道路・面積・建ぺい率・容積率・高さ制限など、それぞれが関連しています。
さらに、防火規制や構造、避難、消防法、都市計画法、条例など、建物や地域によって確認しなければならない項目も変わります。
すべての法律を建築主自身が理解する必要はありません。
しかし、
- 用途地域によって建てられる建物が違う
- 道路条件によって建築できる範囲が変わる
- 敷地が空いていても建ぺい率や容積率によって増築できないことがある
- 高さにもさまざまな制限がある
という基本的なポイントを知っておくだけでも、増築計画は進めやすくなります。
特に工場や倉庫では、事業拡大に合わせて将来増築する可能性があります。
新築時から将来の増築スペース、建ぺい率・容積率の余裕、車両動線、設備配置などを考えて敷地計画を行っておくことも重要です。
「今建てられるか」だけでなく、「将来どこまで増築できるか」まで考えて建築計画を立てる。
それが、長く使える工場・倉庫づくりにつながります。
増築や工場・倉庫建設をご検討の場合は、計画の初期段階から建設会社や設計者へ相談し、敷地条件や関係法令を確認しながら進めていきましょう。
※建築基準法の適用や確認申請の要否は、建築物の規模・用途・構造・地域、自治体の条例などによって異なります。実際の計画では、所管行政庁や建築士などの専門家へご確認ください。

