鉄骨について知ろう!種類・材質・形状・接合方法をわかりやすく解説

工場や倉庫、事務所、店舗、マンションなど、さまざまな建物に使われている「鉄骨」。
建物について調べていると、「S造」「重量鉄骨」「軽量鉄骨」「H形鋼」「角形鋼管」といった言葉を目にすることがあります。
しかし、同じ鉄骨でも、材質や形状、厚さ、接合方法などによって多くの種類があります。
今回は、鉄骨とはどのような材料なのか、代表的な鋼材の種類や断面形状、接合方法まで、できるだけわかりやすくご紹介します。
そもそも鉄骨とは?

鉄骨とは、建物の柱や梁などの主要な構造部分に使用される鋼材のことです。
鉄骨を主要構造に使った建物は、一般的に「鉄骨造」または「S造」と呼ばれます。SはSteel(スチール)の頭文字です。
鉄骨は木材と比較すると高い強度を確保しやすく、鉄筋コンクリートと比較すると構造体を比較的軽くできるという特徴があります。
そのため、柱と柱の間隔を広く取りやすく、工場や倉庫、店舗、体育館などのような広い空間を必要とする建物に適しています。
一方で、鉄骨には熱に弱いという性質があります。
火災などによって鋼材の温度が高くなると、常温時と比べて強度や剛性が低下します。
そのため、建物の用途や規模、法令上必要となる耐火性能に応じて、鉄骨の周囲を耐火被覆材で覆うなどの対策が行われます。
鉄骨造は「鉄だから火にも強い」というわけではなく、構造設計と耐火対策を組み合わせることが重要です。
鉄骨に使われる鋼材の材質

鉄骨には、用途や必要とされる性能に応じてさまざまな鋼材が使用されています。
代表的なものを見てみましょう。
SS材|一般構造用圧延鋼材
SS材は、建築だけでなく機械や土木など幅広い分野で使用されている一般的な鋼材です。
代表的なものに「SS400」があります。
比較的入手しやすく、多くの構造物で使用されています。
ただし、溶接を多用する重要な構造部材では、溶接性などを考慮してSM材やSN材などが選ばれる場合があります。
SM材|溶接構造用圧延鋼材
SM材は、溶接構造物への使用を考慮してつくられた鋼材です。
化学成分や機械的性質などについて規定されており、橋梁や建築物など、溶接によって組み立てる構造物に使用されています。
必要な性能によってA、B、Cなどに分類されるものがあります。
STK|一般構造用炭素鋼鋼管
STKは、断面が円形の鋼管です。
建築物の柱やトラス、機械構造物など、幅広い用途で使用されています。
円形のため方向による断面性能の差が少なく、デザイン性を活かして柱などに使用されることもあります。
STKR|一般構造用角形鋼管
STKRは、断面が正方形または長方形になった角形鋼管です。
住宅や小規模な鉄骨建築など幅広い用途に使用されています。
柱として使いやすく、四方向に壁や梁を取り付けやすいという特徴があります。
ただし、使用条件や加工、めっきなどについては、材料の性質を考慮した設計・施工が必要です。
BCR・BCP|建築構造用冷間成形角形鋼管
BCRやBCPは、主に鉄骨ラーメン構造の柱に使用される建築構造用の角形鋼管です。
BCRは主にロール成形、BCPは主にプレス成形によって製造されます。
一般的なSTKR材と比較して、建築構造用として必要な性能を考慮して製造されているため、中規模から大規模な鉄骨建築の柱などに多く使用されています。
SN材|建築構造用圧延鋼材
SN材は、建築物の構造用として使用することを目的につくられた鋼材です。
溶接性や塑性変形能力など、建築構造物に必要とされる性能が考慮されています。
大梁や柱、ダイヤフラムなど、地震時に大きな力が作用する重要な部分に使用されることがあります。
重量鉄骨と軽量鉄骨の違い

鉄骨は、使用する鋼材の厚さによって「重量鉄骨」と「軽量鉄骨」と呼び分けられることがあります。
重量鉄骨
一般的に、厚さ6mmを超える鋼材を主要構造に使用するものを重量鉄骨と呼びます。
オフィスビル、工場、倉庫、店舗など比較的大きな建物で多く採用されています。
大きな柱や梁を使用することで、柱の少ない広い空間をつくりやすいことが大きな特徴です。
例えば工場であれば、生産設備の配置やフォークリフトの動線を確保しやすく、倉庫であれば、大きな保管スペースをつくることができます。
一方、大きな建物を支えるため、建物の重量や地盤の状況に応じた基礎設計が重要になります。
軽量鉄骨
一般的に、厚さ6mm以下の比較的薄い鋼材を主要な骨組みに使用する構造を軽量鉄骨と呼びます。
住宅や小規模な建物などで多く採用されています。
部材が比較的軽く、工場で製作された部材を現場で組み立てることで、施工を効率化しやすいという特徴があります。
また、建物の強度を確保するために「筋交い(ブレース)」などを配置する場合があります。
筋交いは地震や風による横方向の力に抵抗する重要な部材ですが、配置されている壁は撤去できない場合があるため、将来的な間取り変更やリフォームの際には注意が必要です。
鋼材は断面形状によっても種類が違う

鉄骨に使用される鋼材は、断面の形によっても分類されます。
H形鋼
断面がアルファベットの「H」の形をした鋼材です。
鉄骨建築では非常によく使われており、主に柱や梁として使用されます。
曲げに対して効率よく抵抗できる形状のため、大きな荷重を支える梁などに適しています。
工場や倉庫などの大空間をつくる鉄骨建築でも代表的な鋼材です。
I形鋼
断面がアルファベットの「I」の形をした鋼材です。
H形鋼と似ていますが、形状や寸法が異なり、建築、橋梁、機械などさまざまな分野で使用されています。
山形鋼
断面が「L」の形をしている鋼材で、「アングル」と呼ばれることもあります。
鉄骨建築では、補強材や下地材などさまざまな場所で使われています。
建築だけでなく、機械、鉄塔、橋梁、船舶など幅広い分野で使用されています。
溝形鋼
断面が「コ」の字のような形をしており、「チャンネル」とも呼ばれています。
建物の胴縁や補助部材などに使用されるほか、背中合わせに組み合わせて柱や梁のように使用することもあります。
角形鋼管
断面が正方形や長方形の箱型になった鋼材です。
四方向に対して比較的バランスの良い性能を持っているため、鉄骨造の柱として多く使用されています。
工場や倉庫、事務所、店舗などでもよく見られる材料です。
円形鋼管
断面が円形になった鋼材です。
どの方向から力を受けても断面性能が変わりにくいため、柱やトラスなどに使用されます。
丸い形状をそのまま見せることで、建築デザインの一部として利用されることもあります。
鉄骨をつなぐ「接合」の種類

建物は、工場で製作された柱や梁などの鉄骨部材を現場へ運び、それぞれを接合して組み立てていきます。
現在の鉄骨建築では、主に「ボルト接合」と「溶接接合」が使用されています。
高力ボルト接合
鉄骨同士を高い締付力を持つボルトで接合する方法です。
代表的な方法が「高力ボルト摩擦接合」です。
ボルトを強く締め付けることで接合面に大きな摩擦力を発生させ、その摩擦によって部材同士がずれないようにします。
鉄骨の建方現場でも広く使用されています。
被覆アーク溶接
溶接棒と母材との間にアークを発生させ、その熱で金属を溶かして接合する方法です。
比較的設備がシンプルで、屋外作業などでも使用されています。
一方、施工品質は作業者の技能や施工条件の影響を受けるため、適切な施工管理が必要です。
CO2ガスシールドアーク溶接
二酸化炭素ガスをシールドガスとして使用する溶接方法です。
鉄骨製作工場などでも多く使用されており、ワイヤを連続的に供給できるため、作業効率が高いという特徴があります。
鉄骨部材の製作では代表的な溶接方法の一つです。
サブマージアーク溶接
粒状のフラックスで溶接部分を覆い、その内部でアークを発生させる方法です。
大電流で溶接できるため、厚い鋼材を効率よく溶接することができます。
大型の鉄骨部材や鋼構造物など、長い距離を高品質に溶接する場合に適しています。
エレクトロスラグ溶接
溶融したスラグの電気抵抗によって発生する熱を利用して、厚い鋼材を溶接する方法です。
鉄骨建築では、柱内部のダイヤフラムなど、厚板を縦方向に溶接する部分などに使用されることがあります。
非常に専門性の高い溶接方法であり、適切な施工管理と品質管理が重要になります。
まとめ|鉄骨には建物に合わせたさまざまな種類がある

一口に「鉄骨」といっても、実際にはSS材、SM材、STK、STKR、BCR・BCP、SN材などさまざまな材質があります。
さらに、
・重量鉄骨、軽量鉄骨
・H形鋼、角形鋼管、円形鋼管などの形状
・高力ボルトやさまざまな溶接方法
など、建物の規模や用途、構造によって適した材料や工法が選択されています。
特に工場や倉庫では、「広い空間を確保したい」「大型設備を設置したい」「将来的にレイアウトを変更したい」といった要望も多く、鉄骨造の特徴を活かした建物計画が重要になります。
また、鉄骨建築の品質は、構造設計だけで決まるものではありません。
鋼材の選定、鉄骨製作工場での加工精度、溶接品質、現場での建方、高力ボルトの締付け、検査など、多くの工程を適切に管理することで、初めて安全で品質の高い建物が完成します。
近年では鉄骨製作技術や加工機械、品質管理技術も進歩しており、高い精度で鉄骨を製作できるようになっています。
工場や倉庫、事務所など鉄骨造の建物を計画する際には、単に「鉄骨造にする」というだけではなく、建物の用途や必要な空間、将来の使い方まで考えたうえで、適切な構造や鋼材を選ぶことが大切です。

