鉄骨造(S造)の耐久年数はメンテナンス次第!長く使うために知っておきたいポイント

不動産の購入や、工場・倉庫・事務所などの建設を考えるとき、多くの方が気になるのが「建物はどれくらい長く使えるのか」という点ではないでしょうか。
せっかく建てる建物であれば、できるだけ長く、安心して使い続けたいものです。
特に鉄骨造、いわゆるS造の建物は、工場や倉庫、店舗、事務所、医療施設など、さまざまな用途で採用されています。
鉄骨造は強度が高く、大空間をつくりやすい構造ですが、長く使うためには定期的なメンテナンスが欠かせません。
はっきり言うと、メンテナンスがいらない建築物はありません。
どれだけ丈夫な建物でも、雨風や紫外線、湿気、温度変化などの影響を受け続けています。
見た目にはきれいに見えていても、外壁の継ぎ目、防水層、鉄部、屋根、雨樋などは少しずつ劣化していきます。
鉄骨造の建物の寿命は、一般的に約60年程度といわれることがあります。
しかし、これはあくまで目安です。
実際には、建物が建っている環境や使い方、そしてメンテナンスの内容によって、耐久年数は大きく変わります。
今回は、鉄骨造の建物を長く使うために知っておきたい「錆」「防水」「メンテナンス周期」「耐久年数と耐用年数の違い」について解説します。
鉄骨造の大敵は「錆」

鉄骨造のメンテナンスで最も重要なポイントのひとつが、鉄骨の錆を防ぐことです。
鉄や鋼材は強くて丈夫な材料ですが、水分には注意が必要です。
雨水、結露、湿気などが長期間にわたって鉄部に触れると、錆が発生することがあります。
錆が進行すると、鉄骨の断面が少しずつ減少し、建物の強度に影響を与える可能性があります。
つまり、鉄骨造の建物を長持ちさせるためには、鉄骨をいかに水分から守るかが大切です。
通常、鉄骨は鉄骨加工工場で製作される段階で、防錆塗装が施されます。
防錆塗装とは、鉄骨が錆びにくくなるように表面を保護する塗装のことです。
そのため、建物が完成してすぐに錆を心配する必要は基本的にはありません。
しかし、年月が経つにつれて塗装は少しずつ劣化します。
また、外部に露出している鉄部や、雨が当たりやすい部分、湿気がたまりやすい部分、海に近く潮風の影響を受けやすい場所では、錆が発生しやすくなります。
鉄の表面に少し錆が出たからといって、すぐに建物全体が危険になるわけではありません。
表面的な錆であれば、早めに処置することで大きな問題を防ぐことができます。
ただし、その錆が表面だけのものなのか、内部まで進行しているものなのかは、専門的な判断が必要です。
見た目だけで判断せず、建築会社や専門業者に確認してもらうことが大切です。
鉄骨造は水の侵入を防ぐことが重要

鉄骨造の建物は、柱や梁などの鉄骨材を組み合わせて骨組みをつくり、その外側に屋根材や外壁材を取り付けて建物を構成します。
コンクリートで覆われている建物とは違い、鉄骨造では屋根や外壁、防水層、シーリングなどによって水の侵入を防ぐことが重要になります。
建物の中に水が入り込むと、雨漏りだけでなく、鉄骨の錆、断熱材の劣化、内装材の傷み、カビの発生など、さまざまなトラブルにつながります。
特に工場や倉庫では、保管している製品や設備に影響が出る場合もあります。
そのため、鉄骨造の建物では、屋根や外壁、防水部分のメンテナンスが建物の寿命を左右するといっても過言ではありません。
水の侵入を防ぐためには、屋上や屋根の防水、外壁の継ぎ目に使われるシーリング、雨樋、笠木、庇まわりなどを定期的に点検することが大切です。
「雨漏りしてから直せばいい」と考える方もいるかもしれませんが、雨漏りが目に見える状態になったときには、すでに内部で劣化が進んでいることもあります。
早めの点検と予防的なメンテナンスが、結果的に建物を長持ちさせ、修繕費用を抑えることにつながります。
防水メンテナンスの主な種類

鉄骨造の建物を長く使うためには、防水メンテナンスが欠かせません。
防水工事にはいくつかの種類があり、建物の形状や用途、屋上の使い方、劣化状況によって適した工法が変わります。
代表的な防水工法として、塗膜防水、シート防水、アスファルト防水があります。
塗膜防水
塗膜防水は、ウレタンゴム系などの液状材料を塗り重ねて防水層をつくる工法です。
液状の材料が硬化すると、ゴム状の防水膜になります。
塗膜防水の大きなメリットは、継ぎ目のない防水層をつくれることです。
複雑な形状の場所や、配管・設備まわりなどにも施工しやすく、改修工事でもよく使われます。
一方で、材料が比較的柔らかいため、重いものを置いたり、硬いもので傷をつけたりすると、防水層が傷むことがあります。
また、塗膜の厚みが耐久性に関係するため、適切な厚みで施工することが重要です。
シート防水
シート防水は、塩化ビニール樹脂や合成ゴムなどの防水シートを貼り付けて防水層をつくる工法です。
工場で製造されたシートを使用するため、品質が安定しやすく、広い屋上などに向いています。
耐久性に優れており、建物の状況によっては長期間の防水性能が期待できます。
特に平らで広い面積の屋上などでは、効率よく施工できる点がメリットです。
ただし、シート状の材料を貼り合わせるため、複雑な形状の場所では継ぎ目が多くなり、施工に注意が必要です。
下地の状態や施工方法によって仕上がりに差が出るため、経験のある業者に依頼することが大切です。
アスファルト防水
アスファルト防水は、アスファルト系の防水材とルーフィングシートを重ねて防水層をつくる工法です。
昔から使われている防水工法で、信頼性が高く、屋上防水などで採用されることがあります。
防水性能が高く、保護コンクリートを打つことで防水層を守ることもできます。
また、屋上緑化などを行う場合にも採用されることがあります。
一方で、防水層が保護コンクリートや仕上げ材の下に隠れるため、劣化状況を直接確認しにくい場合があります。
そのため、メンテナンスのタイミングを判断しにくい点には注意が必要です。
どの防水工法がよいかは、建物の状態や使い方によって異なります。
費用だけで判断するのではなく、建物に合った工法を専門家と相談しながら選ぶことが大切です。
メンテナンス周期の目安は10年ごと

鉄骨造の建物では、10年ごとの定期点検・メンテナンスをひとつの目安にするとよいでしょう。
もちろん、建物の立地や使用状況によって、必要なメンテナンス時期は変わります。
海沿いで潮風を受けやすい場所、湿気が多い場所、雨風が強く当たる場所、工場内で水や薬品を扱う場所などでは、劣化が早まることもあります。
反対に、環境条件が比較的よく、定期的に点検されている建物であれば、良い状態を長く保てる可能性があります。
点検すべき主なポイントは、屋根、防水層、外壁、シーリング、鉄部、雨樋、建具まわりなどです。
特にシーリングは、外壁材の継ぎ目や窓まわりに使われており、劣化すると雨水が侵入する原因になります。
メンテナンスのタイミングが遅れると、小さな補修で済んだはずの劣化が大きな改修工事につながることがあります。
例えば、防水層の劣化を放置した結果、雨漏りが発生し、内装や設備、鉄骨部材まで補修が必要になるケースも考えられます。
一見すると費用がかかるように感じる定期メンテナンスですが、長い目で見ると建物全体の修繕費を抑えることにつながります。
「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにするのではなく、10年をひとつの節目として専門業者に点検してもらうことをおすすめします。
耐久年数と耐用年数は違う

建物の年数について調べていると、「耐久年数」と「耐用年数」という言葉を目にすることがあります。似た言葉ですが、意味は異なります。
耐久年数とは、建物や部材がどれくらいの期間、性能を保って使用できるかを示す目安です。
メーカーや専門機関などが、材料や工法、使用環境などをもとに示すことがあります。
ただし、建物の使われ方や環境、メンテナンス状況によって大きく変わるため、絶対的な年数ではありません。
一方で、耐用年数とは、税務上の減価償却を計算するために定められた年数です。
建物を資産として扱う場合に、何年に分けて費用として計上するかを判断するためのものです。
つまり、耐用年数を過ぎたからといって、すぐに建物が使えなくなるわけではありません。
反対に、耐用年数内であっても、メンテナンスが不十分であれば劣化が進むこともあります。
建物を実際に長く安全に使うために重要なのは、書類上の年数だけではなく、現在の建物の状態です。
鉄骨造を長持ちさせるために大切なこと

鉄骨造は、適切に設計・施工され、定期的なメンテナンスを行えば、長く使い続けることができる構造です。
しかし、丈夫な構造だからといって、何もしなくてもよいわけではありません。
鉄骨造の寿命を左右するのは、錆を防ぐこと、水の侵入を防ぐこと、そして劣化を早めに見つけることです。
特に重要なのは、次のような点です。
屋根や屋上の防水層に劣化がないか確認すること。
外壁のひび割れやシーリングの切れを放置しないこと。
鉄部の錆を早めに発見し、必要に応じて補修すること。
雨樋や排水まわりの詰まりを防ぐこと。
そして、10年ごとを目安に専門家による点検を行うことです。
建物は、完成した瞬間がゴールではありません。
完成してからどのように維持管理していくかによって、建物の価値や寿命は大きく変わります。
工場や倉庫、事務所などは、事業を支える大切な資産です。
建物の劣化を放置すると、修繕費用だけでなく、業務停止や商品・設備への被害につながる場合もあります。
だからこそ、日頃から建物の状態に目を向け、気になる部分があれば早めに専門家へ相談することが大切です。
鉄骨造の耐久年数は、メンテナンス次第で大きく変わります。
こまめな点検と適切なメンテナンスを行い、大切な建物を長く安心して使い続けていきましょう。

