大規模災害後に建物を調査する2つの理由とは?安全確認と被災者支援について解説

日本では、地震や台風、集中豪雨など、さまざまな自然災害が発生しています。
大規模な災害が起きると、住宅や工場、事務所などの建物にも大きな被害が及びます。
建物が倒壊したり、浸水したりすると、生活や事業に支障が生じるだけでなく、災害後にも思わぬ危険が残ることがあります。
例えば、外観に大きな損傷が見られなくても、柱や梁、基礎などが傷んでいる可能性があります。
そのまま建物を使用すると、余震などによって二次災害が発生するおそれがあります。
こうした危険を防ぎ、被災された方々の生活再建を支援するために行われるのが、災害後の建物調査です。
今回は、大規模災害後に建物を調査する2つの理由を中心に、罹災証明書や応急危険度判定の仕組みについて、わかりやすく解説します。
災害後に建物の調査が必要になるのはなぜ?

地震や豪雨などの自然災害によって建物が被害を受けた場合、まず確認しなければならないのが建物の安全性です。
建物には、見た目だけではわからない損傷が発生していることがあります。
例えば、地震によって柱や梁の接合部分が傷んだり、基礎にひび割れが生じたりするケースです。
また、豪雨によって地盤が緩み、建物が傾くこともあります。
このような状態で建物を使い続けると、二次災害につながる危険があります。
さらに、被災した住宅の修理や生活再建には、公的な支援が必要になる場合があります。
そのため、建物がどの程度被害を受けたのかを確認する調査も重要です。
災害後の建物調査には、主に次のような役割があります。
建物の危険性を確認し、二次災害を防ぐ
建物の被害程度を調べ、生活再建に必要な支援につなげる
建物を今後も使用できるか判断するための情報を得る
ただし、これらはすべて同じ調査で確認できるわけではありません。
調査の目的によって、制度や判定方法が異なります。
罹災証明書とは?被災後の生活再建に必要な書類

地震や台風、豪雨などによって住宅が被害を受けた場合、市町村が被害の程度を証明する書類を「罹災証明書(りさいしょうめいしょ)」といいます。
罹災証明書は、被災された方が公的支援を受ける際に重要となる書類です。
罹災証明書で受けられる主な支援
罹災証明書は、次のような支援制度を利用する際に必要となる場合があります。
被災者生活再建支援金の支給
住宅の応急修理に関する支援
応急仮設住宅への入居
税金や社会保険料などの減免・猶予
住宅再建に関する融資や災害義援金
ただし、罹災証明書があればすべての支援を受けられるわけではありません。
被害の程度や世帯の状況、各制度の条件によって対象が異なります。
住宅の被害はどのように判定される?
罹災証明書を発行するため、市町村では住宅の被害認定調査を行います。
調査では、屋根や外壁、柱、基礎などの損傷状況を確認し、国が定めた基準に基づいて被害の程度を判定します。
主な区分には、全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊・準半壊に至らない、などがあります。
また、大規模災害時には、航空写真や浸水範囲などの情報を活用して、一定の条件を満たす地域の住宅を一括で判定する場合もあります。
これは、被害認定調査を効率的に進め、罹災証明書をできるだけ早く交付するための仕組みです。
なお、交付までにかかる日数は災害の規模や自治体の状況によって異なります。
応急危険度判定とは?地震後の建物の危険性を確認する制度

大規模な地震が発生した場合、建物の危険性を迅速に確認するために行われるのが「被災建築物応急危険度判定」です。
この制度は、地震で被害を受けた建物について、余震などによる倒壊や外壁の落下といった二次災害を防ぐことを目的としています。
罹災証明書のための調査が「住宅の被害程度」を確認するものであるのに対し、応急危険度判定は「建物に立ち入ることが危険かどうか」を応急的に判断するものです。
つまり、被害の大きさを調べる調査と、建物の危険性を調べる調査は目的が異なるのです。
応急危険度判定士とは?
応急危険度判定は、都道府県などに登録された「応急危険度判定士」が担当します。
判定士には、建築士などの専門知識を持つ人が多く、所定の講習や登録手続きを経て活動します。
大規模地震の発生時には、市町村が必要に応じて判定を実施し、都道府県や関係団体の協力を受けながら調査を進めます。
判定士は一般的に2人1組で活動し、建物の構造や損傷状況を確認します。
なお、この応急危険度判定は主に地震で被災した建築物を対象とする制度です。豪雨などによる宅地の被害については、別の危険度判定制度があります。
応急危険度判定の調査方法と3つの判定結果

応急危険度判定では、建物の外観や損傷状況などを確認します。
主な調査項目は次のとおりです。
建物の傾きや沈下、倒壊のおそれ
柱・梁・壁などの損傷状況
外壁や窓ガラス、屋根材などの落下の危険性
看板や付属設備などの転倒・落下の危険性
調査後は、判定結果を色分けしたステッカーで建物の出入口などに掲示します。
赤色:危険
建物の倒壊や部材の落下などの危険性が高く、立ち入ることが危険な状態です。
安全が確認され、必要な措置が行われるまでは、むやみに近づかないことが大切です。
黄色:要注意
建物に何らかの危険性が認められ、立ち入る場合には十分な注意が必要な状態です。
ステッカーに記載された注意事項を確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
緑色:調査済
応急的な調査において、危険性が比較的小さいと判断された状態です。
ただし、緑色だからといって、建物の安全性が完全に保証されているわけではありません。
余震によって被害が進む可能性もあるため、損傷が見つかった場合には詳しい調査が必要になります。
大規模災害後に建物を調査する2つの理由

では、なぜ災害直後の混乱した状況でも、建物の危険度を調査する必要があるのでしょうか。
大きな理由は2つあります。
理由① 正しい情報を提供して二次災害を防ぐため
大規模な地震が起きた直後は、建物がどの程度危険な状態なのか、一般の方には判断が難しいものです。
外壁にひび割れがある建物でも、すぐに倒壊するとは限りません。
反対に、外観に大きな被害が見られなくても、内部の構造部分が損傷している場合があります。
こうした危険を専門家が確認し、わかりやすく伝えることが応急危険度判定の重要な役割です。
判定結果を建物の見やすい場所に掲示することで、所有者や居住者だけでなく、近くを通行する人にも危険性を知らせることができます。
例えば、危険と判定された建物への立ち入りを避けたり、落下物のおそれがある場所を通らないようにしたりすることで、二次災害の防止につながります。
正しい情報をできるだけ早く伝えることが、人命を守る第一歩になるのです。
理由② 被災者の不安を軽減するため
もう一つの理由は、被災された方々の不安を少しでも軽減することです。
突然の地震によって住み慣れた住宅が被害を受けると、「この建物に戻っても大丈夫なのか」「余震が起きたら倒壊しないだろうか」といった不安が生じます。
特に、建物の構造に詳しくない方にとって、安全性を自分で判断することは簡単ではありません。
そこで、建築の専門家が建物を調査し、現状の危険性を説明することが大切になります。
調査結果によって注意すべき場所や今後必要な対応が明らかになれば、避難や修繕などを検討しやすくなります。
もちろん、応急危険度判定だけで建物の安全性を完全に確認できるわけではありません。
しかし、専門家による客観的な情報が得られることは、被災者が次の行動を考えるうえで大きな助けになります。
被災宅地危険度判定制度とは?地盤や擁壁の安全も重要

建物そのものだけでなく、建物が建っている土地の安全性も確認する必要があります。
そこで活用されるのが「被災宅地危険度判定制度」です。
この制度では、大規模な地震や豪雨などによって被害を受けた宅地について、二次災害の危険性を調べます。
主な調査対象は、擁壁(ようへき)、宅地の地盤、斜面などです。
擁壁とは、土砂が崩れるのを防ぐために設置された壁のことです。
例えば、大雨によって擁壁が傾いたり、地震で宅地に大きな亀裂が生じたりすると、建物にも被害が及ぶ可能性があります。
被災宅地危険度判定でも、結果を3段階で表示します。
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赤色:危険宅地 ― 危険性が高く、立ち入りなどに注意が必要
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黄色:要注意宅地 ― 変状などがあり、十分な注意が必要
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青色:調査済宅地 ― 応急的な調査で危険性が比較的小さいと判断された宅地
なお、建物の応急危険度判定では調査済が緑色ですが、宅地の場合は青色となります。
災害後の安全を考えるうえでは、建物と地盤の両方を確認することが重要です。
被災した建物を修理する前に確認したいこと

災害によって建物が被害を受けると、早く修理して元の生活に戻りたいと考えるのは当然です。
しかし、慌てて修理を始める前に、確認しておきたいことがあります。
まず大切なのが、被害状況を写真に残しておくことです。
片付けや修理を行う前に、建物の外観や室内、損傷した部分、浸水した高さなどを記録しておきましょう。
これらの写真は、罹災証明書の申請や保険金の請求などに役立つ場合があります。
また、建物に大きな傾きやひび割れが見られる場合は、無理に立ち入らず、自治体や建築の専門家に相談することが大切です。
応急危険度判定は、あくまでも災害直後の危険性を判断するものです。
そのため、継続して建物を使用する場合や大規模な修繕を行う場合には、必要に応じて詳しい建物調査を実施しましょう。
災害後の悪質な修理業者にも注意
災害後には、被災者の不安につけ込んだ悪質な修理業者によるトラブルも発生しています。
「今すぐ修理しないと法律違反になる」「保険を使えば無料で修理できる」などと説明されても、その場ですぐに契約しないことが重要です。
修理が必要な場合は、信頼できる施工会社や建築士に相談し、工事内容や費用を十分に確認しましょう。
まとめ|災害後の建物調査は人命と安心を守るために重要

大規模災害後に建物を調査する目的は、単に被害の大きさを確認することだけではありません。
特に応急危険度判定には、「正しい情報を提供して二次災害を防ぐこと」と「被災者の不安を軽減すること」という2つの大切な役割があります。
また、罹災証明書のための被害認定調査は、被災者が必要な支援を受け、生活を再建するために欠かせないものです。
日本では、過去の災害から得た教訓をもとに、地震だけでなく水害や風害などにも対応する制度の整備が進められています。
しかし、自然災害の被害を完全に防ぐことはできません。
だからこそ、日頃から建物の耐震性や維持管理に関心を持ち、万が一の災害に備えておくことが重要です。
建物の安全性を確保することは、そこで暮らす人や働く人の命を守ることにつながります。
災害後の適切な調査と正しい情報の活用によって、一人でも多くの方が安全に、そして一日も早く日常生活を取り戻せることを願っています。

